2話 小話



恋バナをしよう!

2話「愛しみ罪代」の2-4の後の場面の続き小話……いや小ネタか、いつも通り。
・阿呆な方面で若干お下品です。
・なんだか管理人は変態で阿呆なので、本編無視して少しキャラ崩壊させています。


 ひそひそ、ひそひそ。水色屋の弥久とセンの部屋、夜更け。
「なーあ、夕凪ちゃんって、どんな子なんだよ、聞かせてよ、センさん」
 弥久はセンが背を向けて丸くなっていても、お構いなしに話しかけてくる。
「弥久さん、もう勘弁してよ。早く寝ないと明日起きるのが本当に辛くなるよ」
「え、センさんと夕凪ちゃんの仲の良い様子を聞いて、俺が傷つくってこと?」
真面目な声で聞いてきた。
「……どうしてそうなるんですか」
からかっているのだろうが、ちょっと不安になる。
「どこで会ったの?」
「え、っと……クルイに追われて道を逸れて、辿りついた村に夕凪がいたみたいな?」
「『みたいな?』ってなんだよ! もっと真面目に語れ! 好きなんだろう!」
 弥久はやけに陽気である。
「いや、好き嫌いはともかく、俺、眠いんですけど……」
「一番早く眠るには、洗いざらい話しちまうことだ」
 夕凪のことを話したくないのは、墓穴を掘ってしまうかもしれないのと、どこに耳があるかわからないからだ。森囲村に千朱原千雨がいたという情報がどこまで伝わっているかわからないが、なるべくそういった単語は出したくない――が、弥久は語るまで寝かせてくれないらしい。これだけ話しかけられていると、寝たふりをすることも出来ない。
 センは軽くため息をつき、弥久の方を向いた。弥久が体を起こしているので、センもあぐらをかいた。
「よしよし、やっと話す気になったか。俺さぁ、なかなかこういう話を出来る相手がいなくてさぁ……今後のために色々聞いておこう」
そう言ってぽり、と頬を掻く弥久を見てしまえば、もう邪険に扱うこどできない。
「まあ、なんでも聞いてください。答えられることなら、なんでも答えるから」
 センは苦笑し、弥久はにっこり笑った。
「迷いこんだ村にいた娘と恋仲になるってぇ、センさん、最初どうやって声かけたんだ?」
「声かけたっていうか、クルイに襲われているところを、」
「助けたの!? っかぁっ! かっこいいな! それじゃ夕凪ちゃんの方が、一目ぼれだな!」
「……いや、助けられた」
「助けられた!?」
弥久があんぐり口をあけた。面白い顔だ。
「センさんを助けるって、え、何? 夕凪ちゃんって熊と猪をかけ合わせたような人なの?」
「えー、夕凪は可愛い子だよ。弓がね、得意だから」
「へ、へえ。そうしたら、結構気が強そうだな、強い女の子って」
「うーん、そうだねえ」
眠くなってきた。昼間横になっていたが、ずっと考え事をしていて疲れているのだ。
「いくつなの」
「……十七、八」
夕凪に聞いたような気もするが、聞いていなかったような気もする。いくつだったか。眠くて知っているか否かさえわからない。
「弥久さん、あの、ねむーいぃ」
がくんと首が前に揺れた。はっと顔をあげるが、まだ眠い。弥久は急につまらなそうに口をとがらせ、しかしすぐにニヤリとした。
「なんだよ、知らなねぇのか。あ、もしかして、センさんの片思いってぇオチかい? まさか、手ぇも繋いだことないんじゃないの」
眠い。
「うぅん、押し倒したことがあるだけじゃない?」
「はっ?」
「ふぇ?」
「お、お、おぉお? 押し倒した?」
弥久の声はひっくり返っている。目玉をかっと見開いている。
「うん、押し倒した押し倒した……はりゃ? ……っ!!! いやっ! ちがう!」
「ちょ、うるさい」
弥久がセンの口を押さえた。
「はあ、センさん、大人しい顔して、やるなあ……いや、でもだからって、押し倒すって、そりゃあ、どうなのよ」
 乾いた笑みを浮かべ、弥久は急によそよそしくなった。
「違うよぉ、違うんだよぉ、押し倒しったって、それはさあ」
センは頭をかかえた。眠気はすっとんでいる。
「え、なに、同意のうえ?」
「一方的に」
「もうだめじゃん」
「いや色々考えがあって、ね?」
「なにさ、色々って」
「色々っていってるじゃない、そこで察してくれてもいいじゃない」
「前言っていた後ろ暗いところがあるって、そのこと?」
「いやいや違いますよ、もちろんですよ」
「怪しいですね」
「いや本当ですよ、結局、夕凪に殴られてそのまま家を飛び出したんですもの、未遂じゃないですかこれは」
「ちょ、それ墓穴掘ってる」
弥久が少し離れた。
「うぅ」
 こんなことで(とはいえ嘘は言っておらず、だからこそタチが悪いのだが)せっかく出来た友人を失うことになるとは。涙が出てきた。
「センさん、ごめんって。からかいすぎた」
ぽんと肩を叩かれた。顔を上げると、弥久が穏やかな顔をしていた。
「うぇ?」
「センさんの顔を見ていれば、夕凪ちゃんって子ときちんとわかり合えていることぐらいわかるよ。そうだろ?」
「う、ん……夕凪、待っててくれるって、言った」
「よかったな」
弥久が頭を撫でてくれた。
「ありがとう、弥久さん」
弥久がごろんと横になる。もう寝るのだろう。ずいぶん遅い時刻になってしまった。
「まあ、うらやましい限りだよなー。どうしたら俺もかわいい女の子とお知り合いになれるのかねえ」
「弥久さんはちょっとうるさいから、黙ればいいんじゃない?」
センは温かい心持ちのまま、にっこり言った。
 弥久はセンを慰めてくれた。センだって弥久のために出来る限り助言したい――センは本当に、それしか考えていない、のに。
「弥久さん!? ど、どうしたのっ!?」
弥久が虚ろな笑みになっている。やや上がった口の端はひくひくしている。
「うわーうわー、センさんってそれ素ですかー。そういえば利兄ぃが『センさんは素でいろいろやるぜ』って言ってたけどさぁ、こういうことかよぉ」
何故か急に沈んでしまった弥久である。センには理由がさっぱりわからない。
 その後センは、弥久に「どうすればもてるか」という相談を延々され、結局一睡もできなかった。

おわり

センさんは本当にあれだよな、にっこり引き裂くよね。
きっとハイパーサディスティックなんだよ彼は。
ちなみに夕凪さんは18歳です、誕生日は8月11日です。

テンションあがって3時間くらいで書いたやつです、小ネタは本当に面白いよね! 管理人が!
読んでいただきありがとうございました!





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