1話 小ネタ



実験――もし女の子から「あんたのことなんか好きでも何でもないんだからっ!」と言われたら...

被験者:セン(千雨)
「あんたのことなんか好きでも何でもないんだからっ!」

目をパチクリさせるセン。しかしすぐにまろやかな笑みを浮かべると、
「もう、そんなこと言ってぇ」
とおかしそうに言い、彼女の頭をなでます。そのまま軽く彼女を壁に押し付けると、耳元に顔を持っていき、
「本当の気持ちは、知ってるよ」
と囁きました。

基本的に軟派者です。


被験者:雪村由月
「あんたのことなんか好きでも何でもないんだからっ!」

雪村さん、思案顔。懐手などし、しばらくの間黙りこみます。数瞬の沈黙の後言う言葉は、
「そうか」
という一言だけ。そのまま彼女に背を向け、歩き初めてしまいました。
少し歩いたところではた、と立ち止まると彼女を振り返り、無邪気な笑顔で一言。
「でも私がお前のことを大切に思っていることに変わりはないのだから、別段、問題無いだろう?」
また前に向き直り、雪村さんはそのまま歩いていきました。

意識しないで言っちゃうところが、罪な人だ。


被験者:灼尊(灼村尊寂←嘘。)
「あんたのことなんか好きでも何でもないんだからっ!」

「おう、俺もお主のような娘、好きでも何でもないわっ!!!」
大音声で言うと、灼尊さんはドカドカ足音を鳴らし、彼女の元を去っていきました。
……正直へこみましたが、ご飯を食べて忘れたようです。花より団子。

損な性格ですね。


被験者:(まさかの)小平次
「あんたのことなんか好きでも何でもないんだからっ!」

「おやおや、最近の若い人はそんなことばかり言うのだから。いけませんよ、千雨さん」
小平次さん、諭すような口調でセンを見ます。センは渾身の女子口調(おなごくちょう)が小平次に通じず、恥ずかしそうにうつむきました。
センが小平次さんに懇願します。
「勘弁してください、本当駄目なんですよ、俺」
でも小平次さんはゆっくり首を横に振ります。
「いけませんよ、好き嫌いしちゃあ。食べましょうね、ピーマン」
うつむくセンの視線の先には、お皿にのったピーマンがひとかけらありました。
小平次さんはなぜか、どことなく嬉しそうでした。

お残しは、許しません。


おまけ:セン(千雨)
上のネタを書いたのがずいぶん前でして、今考えると千雨さんはこっちかなぁという妄想。どっちもどっちですが(笑) 乙女ゲームってやったことないけど、「乙女ゲームかっ!」てセルフツッコミした真夜中の作。

「あんたのことなんか好きでも何でもないんだからっ!」

センは目を見開く。ふいに悲しそうな笑みに変わり、
「ごめんね」
と呟いた。ためらいがちに彼女に手を伸ばし、触れる寸前で、やっぱりためらって、手を下ろした。
震える声で、もう一度。
「ごめんね――俺は、好きなままでいい?」
悲しそうな顔で笑ったまま、彼女の目を見つめた。

天然軟派男……知らず知らずのうちに口説きまくってるよ、きっと。

おわり





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